ペンデレッキ -3.31

Last-modified: Sat, 09 Feb 2008 12:39:22 JST (3901d)

 ムジークフェラインの大ホールで、ORF交響楽団ほかの演奏を聴いた。ORFはオーストリア放送の略なので、その意味では日本のNHK交響楽団にあたる。

 バルコンの席は初めてだが、通路の直ぐ横で視覚的にも最高の席だった。バルトークの「ヴァイオリン協奏曲第2番」は、位置のせいか、ソロヴァイオリンの音が今ひとつ通って来ない感じだったが、他のバルトークの作品同様、CDでじっくり聞き直してみたい魅力に富んだ作品だった。

 ペンデレッキの作品をステージで聴くのは初めての経験だが、「広島」と「アウシュヴィッツ」は、戦後50年の記念公演の一つとして行われるこの演奏会に相応しい、痛ましい音楽だった。

 弦楽器だけで演奏される「広島」で、トーンクラスターの生の音を初めて聞いた。凄い曲だ。「アウシュヴィッツ」の印象はもっと強烈だった。こんな凄惨な音楽は、これからも滅多に書かれることはないだろう、いや、書かれてはならない音楽だと思う。1979年に見た、アウシュヴィッツ強制収容所のあれこれが思い出されて、目頭が熱くなる思いだった。

 これは大変な音楽だ。演奏者、特に合唱団のメンバーにとっては、途方もなく過酷な曲だ。合唱を受け持った「Wiener Konzertchor」は、ほぼ全員が音叉を片手に歌っていた。当然だろう。メロディーらしいものは全くないと言っていい、凄惨な響きと叫びの連続、練習も大変だったろう。

 途中で席を立って出て行った老人がいた。理由は判らないが、居たたまれなくなった感じだった。音楽の世界はこれからも変遷し、あるいは進歩するとしても、このような音楽が二度と書かれてはならないと、しみじみ思った。

 指揮者の Michael Gielen は,全く無駄のない、基本そのものの棒を振る。それでいて見事に訴える。S.ラトルとは全く対照的な指揮者だ。