オルフェオ-1.14

Last-modified: Tue, 20 Jul 2010 11:13:16 JST (2775d)

 コンツェルトハウスでの、「Resonanzen '95 <Liebe und Tod>」というシリーズの初日を聴いた。Stefano Landi (1586/87-1639)の、「La morte d'Orfeo」「オルフェオの死」という5幕のオペラを演奏会形式で上演したのだが、私がもしモンテヴェルディのオペラ「オルフェオ」を知らなかったら、皆目分からなかっただろうという感じがする。音楽史の時間にLDで毎年見せた為に、粗筋と、オペラ史の中での「オルフェオ」の位置づけが、おぼろげながら判っていて助かった。

 モンテヴェルディのものとは筋書きがかなり違うようだが、共通点は当然あり、楽器の音色や、歌の旋律、合唱の響きなど、時代様式は全く同じと言って良いような気がする。私の耳ではとても、ランディとモンテヴェルディの違いは聞き分けられない。特に合唱の響きで、モンテヴェルディ特有の響きだと思っていた、短2度で鋭くぶつかる形が全く同じように現われたのには仰天した。

 殆ど全部、イタリア語の台本を見ながら、ドイツ語の対訳でおぼろげな意味を取る聴き方をしたわけだが、Bacco (Bacchus) の歌の途中で聴衆から笑い声が聞こえた。畜生! イタリア語が判るわけだ。対訳を見ても私には残念ながら笑えない。

 古楽器の音色、特にコルネットの冴えた音が印象に残るのと、Mercurio (Merkur) 役のカウンターテナーと Euridice (Eurydike) の澄んだソプラノが印象深かった。全曲が終わってからの拍手が凄い。ブラヴォーどころか足踏みが今日は出た。この時代の音楽に興味のある人が多かったのだろうが、それにしてもヴィーンの聴衆の耳は凄い。

 帰りの地下鉄の中でふと考えたのだが、幾らかでもヨーロッパ音楽に近づくのが、私がヴィーンに来た目的だった筈だが、一向に近づいてはいない。何かが違ったとすれば、少しばかり倍率の良い望遠鏡を持ったということか。今までおぼろげにしか見えていなかったもの、全く見えていなかったものが、幾らか見えるようになった、とは言えるかも知れないが、世界が幾らか広がっただけで、決して近くなったわけではない。見えなかった世界が見えてくるということは、その広がりだけむしろ距離が遠くなることのような気がする。

 12日の朝日の国際衛星版に、「約5億光年離れたところにある銀河同士が衝突した直後だと思われる写真」というのが載っていた。途方もない距離だが、この写真の撮影に成功したNASAの研究者にとって、宇宙は近くなったのだろうか。