「メサイア」 -6. 8

Last-modified: Tue, 20 Jul 2010 16:09:47 JST (2865d)

 ムジークフェラインの大ホールで、ヘンデルの「メサイア」を聴いた。女性のパートを担当したのがヴィーン少年合唱団、男性のパートを担当したのはそのOBたち、指揮者もまたOBというわけで、入場券に Wiener Sängerknaben と書いてあった理由が、プログラムを読んで初めて理解できた。

 オケの「Wiener Instrumentalisten」という団体はいわば寄せ集めのようだが、素晴らしい演奏をした。私の席もまた素晴らしく、2階の1列目のど真ん中、距離的にはやや遠いが、ムジークフェラインで他の聴き手を全く意識しないで聴くことができたのは今日が初めてと言ってもいい。すべての点で、まさに期待以上の演奏会だった。

 ソロの部分は初めて聴くところも多いが、合唱の部分の大半は歌ったり指揮した経験があるだけに、少年合唱団でどの程度歌えるのかとやや不安な気持ちでいたのだが、要らぬ心配だった。楽々と歌いこなしている。むしろ先輩たち以上に楽々と。ヴィーン少年合唱団の真価を、今日初めて聴いたという印象を持った。歌が上手で可愛いらしい子供たちではなく、本当の音楽集団なのだと思った。

 立ったり座ったりだが、7時半に始まって、アーメンコーラスが終わったのが10時15分。アンコールの時間を含めると3時間ばかりをステージの上で過ごすのは、大変なことだ。双眼鏡を持って行っていたので時々子供たちの様子を窺ってみたが、演奏中の態度はさすがに100点だった。

 これは凄いことだ。音楽性にも優れていなければ団員にはなれまいが、体力的な資質にも恵まれていなければ今日のような演奏会に参加することはできまい。彼らの逞しさは、ある意味では演奏の素晴らしさ以上に感動したことと言えるかも知れない。日本なら児童福祉法違反だろうが、シュターツオーパーの公演では22時過ぎくらいまではしょっちゅう駆り出されているわけで、彼らに関しては「児童」の概念は当てはまらないのかも知れない。

 さすがに演奏が終わった後は本来の子供の顔になった。もう眠そうな表情の子もいるし、エッ、まだ立つのっ、という感じでアンコールのための起立をする。当然だろう。1分でも早くベッドにもぐり込みたいのが彼らの心情だろうから。

 S氏が斜め後ろの席に来ていて、終わってから、ビールを一杯だけという約束でインゼルで歓談した。先日渡した、私の去年の演奏会のプログラムを読んでいたようで、これまでとは何となく態度が違う。演奏に携わったことのある人間、特に合唱指揮者としての私の経歴が、今日の場合は特に彼の弁舌にブレーキをかけたようだ。

 今日の演奏に関しては彼も、期待以上だったと良い評価をしていた。